円形脱毛症の症状・原因・治療について
2022.05.11井の頭公園前ヒフ科では積極的に円形脱毛症の治療に取り組んでおります。
円形脱毛症の症状:
典型的な症状としては、病名の通り頭皮に丸い脱毛斑が生じます。脱毛斑は一つのこともあれば、多発することもあります。重症の場合は眉毛や睫毛を含むすべての毛が抜けてしまうこともあります。
円形脱毛症の原因:
自己免疫(ふだん細菌やウイルスなどの外敵から身を守るリンパ球という細胞が機能異常を起こし、自己由来の細胞を攻撃してしまうこと)によって自分の毛が障害される病気と考えられています。なぜ自己免疫が起こってしまうのかは完全にはわかっていませんが、本人の体質(遺伝的な素因)といった内的な素因が基礎にあり、ウイルス感染などの外的な刺激も時に加わって生じると考えられています。
円形脱毛症の治療:
軽症の場合、何もせずとも自然治癒することもありますが、悪い状態が続くとミニチュア化といって元に戻りにくくなることがありますので、早めに受診し治療を受けていただくことをおすすめします。主な治療の種類には以下のようなものがあります。どの治療法を受けていただくかは、病気の状態や範囲、期待される効果や副作用などを総合的に考慮し、患者さんと話し合って決定します。
- ステロイド外用療法…副腎皮質ステロイドの外用剤を病変部に塗布します。病変が広範囲にわたる場合、外用後にフィルム剤などで覆う密封療法を行うこともあります。外用なのでステロイドの全身的な強い副作用はほとんど起こりませんが、時折外用部にざ瘡(ニキビ)などが生じることもあります(外用をやめれば元に戻ります)。
- ステロイド局所注射…一か月に1回程度、頭皮に副腎皮質ステロイドの注射を行います。注射に伴う痛みはありますが、全身的な副作用があまりない割に比較的高い治療効果が期待できます。
- 紫外線療法…週に1~2回ほど、紫外線の治療効果のある一部の波長を照射する治療です。当院ではナローバンドUVBとエキシマライトの2種類の取り扱いがあります。
- 凍結療法…週に1回ほど、液体窒素を患部にあてて刺激を加える治療です。簡便に行えますが、円形脱毛症に対して保険適応はありません。
- 局所免疫療法…頭皮にかぶれを起こすSADBE(squaric acid dibutylester)という物質をぬることによりわざとかぶれ反応を引き起こし、それによって引き起こされる免疫の変調により自己免疫反応が抑制されることを期待する治療法です。保険適応はありませんが、日本の円形脱毛症の治療ガイドラインにも載っている立派な治療法です。かぶれをはじめとしたアレルギーのリスクはありますが、比較的高い治療効果が期待でき、さらにステロイドの局所注射に伴う痛みやステロイド内服による全身的な副作用がないといったメリットもあります。特に難治性の小児の患者さんなどでは成長障害の懸念からステロイド内服が選択しにくいため、相対的に免疫療法がいい適応になる場合があります。局所免疫療法を行う場合、通常2週間に1回程度通院していただき、副反応に気を付けながら医師が薬を外用します。治療費などの詳細は当院自費診療ページをご参照ください。
- ステロイド内服療法…副腎皮質ステロイドの内服を行います。円形脱毛症に対し高い効果が期待できる一方、ステロイド内服に伴う副作用(免疫抑制や消化管穿孔、骨粗しょう症、糖尿病や肥満など)のリスクがあります。また、内服を減らしたりやめたりすると脱毛が再燃してしまうことも多く、この治療の導入に当たっては医師とよく相談の上、決定していく必要があります。
- JAK阻害剤…JAKとはヤヌスキナーゼといいます。炎症反応あるいは免疫反応に関係する蛋白質(サイトカイン)が標的となる細胞に出ている受容体と結合し、その情報を細胞内にシグナル伝達するために必要とされる酵素です。これをブロックすることで毛髪への自己免疫を抑制し、円形脱毛症の改善が期待されます。罹病期間が6か月以上、脱毛範囲が概ね50%以上で、12歳以上が適応です。副作用として感染症などが懸念される薬剤であり、導入にあたっては事前に採血や画像検査などが必要となるため、ご希望の方は近隣の病院を紹介させていただく形になります。なお、円形脱毛症が完治するわけではなく、投与を中止すると再発すると言われていることは知っておかなければなりません。
2022/5/11 井の頭公園前ヒフ科(2024/2/6一部改定)