乾癬(かんせん)の診断・治療について

2022.04.27
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乾癬という病気は大きく4つに分かれます(尋常性乾癬・滴状乾癬・関節症性乾癬・膿胞性乾癬)。最も多くみられるのは尋常性乾癬というタイプで、典型的な発疹として銀白色の厚い鱗屑(フケ)を伴う紅斑が、慢性的に体の様々な部位に生じます。

意外と知られておりませんが、乾癬は皮膚のみではなく全身性の炎症性疾患としての側面もあり、慢性的な全身炎症の結果としてメタボリック症候群を合併しやすいと考えられています。重症の場合は心筋梗塞のリスクが高まるといった報告もあります。皮膚のみではなく、食生活や運動、禁煙などのメタボリック症候群への対策も重要です。

尋常性乾癬の治療としては外用療法を基本としますが、難治の場合や広範囲に発疹がある場合などは追加療法を行うことがあります。下記にその種類・メリット・デメリットをあげます。

  • 外用療法…ステロイド軟膏やビタミンD軟膏などを皮疹部に外用してもらいます。効果は全身療法に比べると劣りますが、安全性が高く通常は外用療法のみで治療を行います。ステロイド外用剤は長期間大量に外用した場合は全身的な副作用がでる可能性もありますが、定期的に通院し、医師の指示通りに用法を守って使用すればほとんど起こることはありません。局所的な副作用として皮膚菲薄化、毛細血管拡張、ざ瘡などがありますが、基本的には外用を中止することで徐々に元に戻ります。
  • 光線療法…当院ではナローバンドUVB、エキシマライトを行っています。どちらも紫外線の治療効果のある一部の波長を、週に1~2回ほど患部に照射する治療です。通院の手間はかかりますが、下記にあげるような全身的な副作用がない点で導入しやすい治療法です。
  • 経口レチノイド(エトレチナート)…エトレチナートという内服薬による治療です。ビタミンAの誘導体であるエトレチナートは皮膚の増殖を抑える作用があり、皮疹を改善させます。副作用として皮膚菲薄化や口唇炎や毛髪異常、脂質代謝異常などがあります。胎児に影響を及ぼす危険性がある薬であり、内服中はもちろん、内服終了後も男性で6か月間、女性で2年間の避妊が必要です。
  • 経口PDE4阻害剤(アプレミラスト)…アプレミラストという内服薬による治療です。PDE4を阻害して細胞内のcAMP濃度を上昇させ、炎症性サイトカインの産生を抑制することで乾癬の皮膚および関節症状を改善すると考えられています。海外臨床試験では投与16週のPASI-75(皮膚症状75%改善)達成率は33.1%と生物学的製剤より効果は劣りますが、重篤な合併症の可能性が低く、ご高齢の方へも投与しやすいといった特徴があります。投与初期に下痢や嘔気、頭痛がみられることがあります。安全性と有効性のバランスのとれた薬剤です。
  • 免疫抑制薬(シクロスポリン)…シクロスポリンという内服薬による治療です。主にリンパ球に作用し、強力な免疫抑制作用を示します。効果はアプレミラストと生物学的製剤の中間位と思われます。副作用として免疫力低下・多毛・腎障害・血圧変化・消化器症状等があり、内服する場合は定期的な採血によるモニタリングを行う必要があります。ほかにメトトレキサートという免疫抑制薬も乾癬に適応がありますが、副作用のリスクから当院では基本的に処方しておりません。
  • JAK阻害剤、生物学的製剤…乾癬の病態に関連する酵素やサイトカインをピンポイントで阻害する治療法です。効果が高く、既存の治療が無効な場合や強い関節症状、膿胞性乾癬の症例などに適応があります。薬剤によって差はありますが、投与時のアレルギー反応や免疫抑制などのリスクがあります。当院では本剤による治療は行っておりませんが、適応があり治療をご希望される方は基幹病院をご紹介させていただきます。

 

2022/4/27 井の頭公園前ヒフ科

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井の頭公園前ヒフ科

皮膚科/アレルギー科 dermatology/allergology