外用剤の適切な使用法に関して

2022.10.20

かなり前の話ですが、私がまだ大学病院の新人で、恩師の外来についていたときのことです。どこに行っても治らないという患者さんが来院されました。教授はひとしきり診察を終えると、治らないのは軟膏の使用量が少ないからでしょうと言い、このようにして塗ってくださいと指導し、前医とほぼ同じ軟膏を、ただし何倍もの量で処方しました。患者さんはこんなに塗るのですか?とびっくりしていた様子でしたが、2週間の再診時、大変喜ばれた様子ですっかり良くなった病変をみせてくれました。さすが教授だなあと誇らしく思ったと同時に、同じ軟膏なのに使い方次第でここまで効果に差が出るのだと驚いたものでした。

 

ではどのような使い方が適切でしょうか。

軟膏はすり込まず、皮膚に乗せた後は優しく患部にぬり広げましょう

使用量も大切です。簡単ですが、「てかてかとした光沢が残るくらい」「軟膏を塗った後にティッシュをつけて逆さまにしても落ちないくらい」の量をぬってください

より細かく言えば、FTU(フィンガーチップユニット)という単位が参考になります。軟膏チューブを押し、成人の人差し指の先端から第一関節までまっすぐ伸ばすように出してください。これが1FTUの量です。ローションだと1円玉ほどの面積が1FTUに相当します。1FTUの量を成人の手のひら2枚分ほどの面積に塗布することが適切と言われています。

最初はFTUを参考にしてしっかりとぬり、感覚がつかめてきたら前述したような簡単なぬり方に変えるといいでしょう。

たまにベトベトするのが嫌で外用量が少なくなってしまい、なかなか良くならない患者さんがいますが、しっかり効果を出すためになるべく我慢してぬってもらえればと思います。どうしても使用感が嫌な場合、クリームや液剤に変えるという手もあるため、医師にご相談ください。

使用回数は処方箋に記載されている用法通りにしましょう。手を洗った後などにぬり直したりする必要はないですが、保湿剤に限っては乾燥した場合、随時ぬり直しても大丈夫です。

保湿剤とステロイド軟膏などを一緒に使用するように指示された場合、先に保湿剤を全体的にぬり、もう一剤を後から患部のみに重ねてぬるようにしましょう。

他、やけどや怪我などで大きな傷に使用する場合、直接ぬろうとすると痛いので、清潔なガーゼなどに軟膏を少したっぷりと伸ばし(消毒したナイフや軟膏ベラを使用してください)、創部を覆うようにあててください。

 

2022年10月20日 井の頭公園前ヒフ科 院長 石田正

井の頭公園前ヒフ科

皮膚科/アレルギー科 dermatology/allergology