蕁麻疹の治療薬「ゾレア」について

2025.01.23

ゾレアとは

ゾレア(一般名:オマリズマブ)は、「抗IgE抗体」と呼ばれる薬剤です。「IgE」とは、免疫にかかわる蛋白質の一種です。蕁麻疹の発症機序の一つとして、血液中のIgEなどが体内のマスト細胞を活性化することで、ヒスタミンなどの炎症を起こす物質が放出されてアレルギー症状が誘発されることが考えられています。
ゾレアはIgEとマスト細胞の結合を阻害し、アレルギー症状を軽減させます。

 

効能効果

既存治療で十分な治療効果が得られない特発性の慢性蕁麻疹の方を対象とした第Ⅲ相国際共同検証試験では、12週間におよぶ抗ヒスタミン薬とゾレアの併用治療後、87.7%の方で掻痒スコアがベースラインから5以上の低下がみられました。また、皮疹と掻痒のスコアであるUAS7(Urticaria Activity Score7)が6以下の割合が57.5%、0の割合が35.6%という結果になりました。87.7%の方で痒みが改善し、57.5%の方で痒みや膨疹がかなり落ち着き、35.6%の方で痒みや膨疹が全くなくなったということです。もともと難治性の方たちにおける治験でのデータですので、かなりの有効性が示されたと思います。

とはいえ、ゾレアは蕁麻疹を完治させる薬ではありません。投与後に症状の改善がみられても、治療をやめてしまうとしばらくして徐々に再燃してきてしまうことがあります。ゾレアは既存の治療薬を使っても抑えきれない症状をコントロールして、ストレスなく日常生活を送れるようにサポートする薬です。

 

用法・容量

ゾレアを特発性の慢性蕁麻疹に使用する場合は、通常1回300mgを皮下に注射します。注射は4週間隔で合計3回投与し、その後の状態を見て投与を継続するか中止するかを決定します。

適応患者

ゾレアは喘息や鼻炎にも適応がありますが、当院では「既存治療で効果不十分な特発性の慢性蕁麻疹」に対してのみゾレアの投与を行っています。なお鼻炎や喘息を合併していても、難治性の慢性特発性蕁麻疹があればゾレアの加療は行えますので、お悩みの際は医師にご相談ください。

また、ゾレアは高額な薬剤でもあり、希望されるすべての方が投与を受けられるわけではありません。まずは当院を受診し、医師の診察・問診を受けてから実際に投与可能かどうかを決定させていただきます。なお、治療対象となるのは以下の条件をすべて満たす方です。

  • 抗ヒスタミン薬の内服など、今までの治療で効果が不十分だった
  • 12歳以上である
  • 蕁麻疹の原因が不明
  • ゾレアに対する過敏症の既往がない

*条件を満たす場合でも、妊娠中および授乳中の方はあらかじめご相談ください。

 

自己注射について

当院にて自己注射指導を受けていただいた方には最大3本(3か月分として)まで処方し、自宅で自己注射することもできます。

 

ゾレア使用時の注意点

非常に稀ですが、アナフィラキシーという重度のアレルギー症状が出る場合があります。投与後、呼吸困難、動悸、意識の混濁、血圧低下やふらつき等の症状がでた場合はすぐに受診するか、重症の際は救急要請をしてください。

 

ゾレアの薬価について

1回につき1本40091円(300mg/2mLペン)を4週間間隔で投与する薬ですので、3割負担の場合、一月あたりの自己負担額が12027円となります(別途、診察料などがかかります)。

 

井の頭公園前ヒフ科

井の頭公園前ヒフ科

皮膚科/アレルギー科 dermatology/allergology