新しい乾癬の経口治療薬(ソーティクツ錠)について

2024.04.28
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先日のブログでも少し触れましたが、乾癬の新薬が発売されました。正確には2022年には発売されていたのですが、発売から1年がたち長期処方も可能となったため、今回紹介させていただきます。高額な点を除けば本当にいい薬だと思います。少し長いですが、ご興味のある方は是非ご一読ください。

 

<ソーティクツ(成分名:デュークラバシチニブ)について>

世界初の経口TYK2阻害薬です。TYK2はチロシンキナーゼ2といい、JAK(ヤヌスキナーゼ)1,2,3と並んでJAKファミリー分子の一つと言われます。TYK2を阻害することで、TYK2に関連したインターフェロンαなどの乾癬の発症に役割を果たす1型インターフェロンや、IL-12やIL-23といった乾癬の症状の形成や維持や重要な働きをするサイトカインの働きをブロックすることで効果を発揮すると考えられています。

錠剤で、1日1錠(6mg)を毎日内服します。特徴は、高い効果の割に重篤な副作用が少ないことです。

 

〈ソーティクツの効果について〉

中等症から重症の尋常性乾癬患者を対象とした国際共同臨床試験で、ソーティクツ錠は投与16週間でのPASI 75 (乾癬の重症度スコアが75%改善した)達成率が58.4%と非常に高い効果を示しました。さらに国内で行われた第Ⅲ相臨床試験ではPASI 75達成率 が71.6%とさらに良い結果となりました。

 

〈ソーティクツの適応患者さんについて〉

既存治療では十分に効果が得られない成人の尋常性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症の患者さんに使用できます。なお、既存治療とは光線療法やその他の内服治療のことをいいます。

 

〈ソーティクツの投与法について〉

1日1錠(6mg)を毎日内服していただきます。

 

〈ソーティクツの副作用・注意点について〉

ソーティクツはJAK阻害剤のなかでも副作用は少ないほうですが、以下のような点に注意するべきといわれています。

投与できない方

重篤な感染症の方

活動性結核の方

過去にソーティクツに含まれる成分で過敏症のあった方

注意が必要な方

感染症・感染症が疑われる人または過去に再発性感染症があった方

過去に結核にかかったことのある人または結核の感染が疑われる方

B型肝炎ウイルスキャリアまたは過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがある方
(HBs抗原が陰性で、HBc抗体またはHBs抗体 が陽性の人)

肝臓に重度の障害がある方

妊婦または妊娠している可能性のある方

授乳中の方

治療中に注意すべき症状

感染症(上気道感染等)。感染症にかかると、身体のだるさや発熱、寒気等がみられることがあります。少しでも異変を感じたら、早めにご相談ください。

内服中は生ワクチンの注射はできません。新型コロナウイルスワクチン、インフルエンザワクチンは接種可能です。帯状疱疹ワクチンは成分ワクチン(シングリックス)のみ接種可能です。

 

〈ソーティクツの価格について〉

1日薬価 2770.9円で、30日あたり 83127円となります。

健康保険の自己負担率が3割の方は30日あたり24938円、1割の方は30日あたり8312円となります。

 

〈ソーティクツの処方に関して〉

本剤は2024年5月1日現在、日本皮膚科学会認定分子標的薬使用承認施設で処方を開始することになっています。当院は承認施設ではありませんので、本剤をご希望の場合は近隣の大学病院をはじめとした承認施設を紹介いたします。

なお、承認施設でソーティクツを導入され、しばらくして症状が落ち着いてからの維持としての処方は非承認施設でも行ってよいこととなっています。ご希望の方は病院から逆紹介してもらい、病院と連携しつつ当院でソーティクツの処方を継続することが可能です。

 

2024年4月28日

井の頭公園前ヒフ科 院長 石田正

 

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井の頭公園前ヒフ科

皮膚科/アレルギー科 dermatology/allergology